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Lecture Note
(ALWAYS UNDER CONSTRUCTION)
Microeconomics (ミクロ経済学)
  i)
「日常生活で語るミクロ経済学」 (教養レベル : 大学1年)
  Ch.0. まえがき、目次
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.1. 好みの度合い
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.2. 懐と相談して
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.3. 財の種類:水とダイヤモンドの違い
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.4. 企業の行動
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.5. どのような配分で生産するのか
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.6. 市場とその性質
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.7. 物々交換
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.8. なぜ独占が悪いのか?
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.9. なぜ協力できないのか?
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.10. 協力させるためには?
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.11. 政府の役割とは?
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.12. 逆選抜
【PDF (UP: 2010/4/19)】
 
問題集 【PDF (UP: 2010/4/19)】
 
REF.
-
奥野正寛「ミクロ経済学入門」 日経文庫
-
倉沢資成「入門 価格理論 第2版」日本評論社
  ii)
「初級編」(for beginner) (公務員試験レベル : 大学2, 3年)
  Ch.0. はじめに (Introduction)
【PDF (UP: 2/24)】
  Ch.1. 消費者理論 (Consumer Choice)
【PDF (UP: 2/24)】
  Ch.2. 企業行動 (Firm Behaivor)
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.3. 競争均衡 (Market Equilibrium)
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.4. 不完全競争 (Imperfect Competition)
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.5. 不確実性 (Uncertainty)
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.6. ゲーム理論 (Game Theory)
【PDF (UP: 2010/4/19)】
 
問題集 【PDF (UP: 2010/12/26)】
 
REF.
-
奥野正寛「ミクロ経済学」東京大学出版会, ミクロ経済学演習
-
奥野正寛、鈴村興太郎「ミクロ経済学 (1) 」岩波書店
-
西村和雄「ミクロ経済学入門」岩波書店, 演習 ミクロ経済学入門
-
西村和雄、八木 尚志「経済学ベーシックゼミナール」実務教育出版
-
武隈慎一「ミクロ経済学」新世社, 演習ミクロ経済学
-
今泉博国, 須賀晃一, 渡辺淳一「ミクロ経済学 基礎と演習」東洋経済新報社
  iii)
「中級編」(intermediate)(大学院入試レベル : 大学4, 修士1年)
 
REF.
-
石井安憲, 西条辰義, 塩沢修平「入門・ミクロ経済学」有斐閣,
演習 入門・ミクロ経済学
-
西村和雄「ミクロ経済学」東洋経済新報社
-
奥野正寛、鈴村興太郎「ミクロ経済学(2)」岩波書店
-
ハル R.ヴァリアン「ミクロ経済分析」勁草書房
-
E.マランヴォー「ミクロ経済理論講義」創文社
-
J.M.ヘンダーソン、R.E.クォント「現代経済学 増訂版―価格分析の理論」創文社
-
根岸隆「ミクロ経済学講義」東京大学出版会
-
中村勝之「大学院へのミクロ経済学講義」現代数学社
  iv)
「上級編」(advanced) (大学院レベル : 修士2年, 博士課程)
 
REF.
-
Andreu Mas-Colell, Michael Dennis Whinston, Jerry R. Green "Microeconomic Theory", Oxford Univ Press
-
David M. Kreps "A Course in Microeconomic Theory", Financial Times Prentice Hall
-
Gerard Debreu "Theory of Value: An Axiomatic Analysis of Economic Equilibrium", Yale University Press
-
Martin J. Osborne and Ariel, Rubinstein "A Course in Game Theory", The MIT Press
-
今井賢一, 宇沢弘文, 小宮隆太郎, 根岸隆, 村上泰亮「現代経済学 価格理論 I,
II,
III」岩波書店
  v)
「発展編」(for specialist)
Game Theory (ゲーム理論)
  i)
「具体例で学ぶゲーム理論入門」(大学2, 3年)
  Ch.0. まえがき、目次
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.1. 基本事項
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.2. サッカーのPKを決めるためには?:混合戦略
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.3. 環境問題の根源とは?:共有地の悲劇
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.4. 規格統一競争に勝つには?:調整ゲーム
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.5. なぜ多様な意見があるのか?タカ派とハト派の共存:タカ=ハトゲーム
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.6. なぜ公平性が生まれるのか?:チェーンストアのパラドックス、最後通牒ゲーム
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.7. 中古品を買うときは注意せよ!:情報の非対称性
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.8. 男女の争い:相関均衡
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.9. 何回メールすれば、分かってくれるの?E-mailゲーム:共有知識
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.10. 通貨危機:グローバルゲーム
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.11. なぜ協力できないのか?:繰り返し囚人のジレンマゲーム
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.12. いくら出しても買いたいクジ:サンクトペテルブルクのパラドックス
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.13. 公平な分配法:交渉ゲーム
【PDF (UP: 2010/8/25)】
  Ch.14. 合コンの心得:ゲール・シャープレイのアルゴリズム
【PDF (UP: 2010/8/25)】
 
REF.
-
岡田章「ゲーム理論・入門―人間社会の理解のために」有斐閣
-
ロバート ギボンズ「経済学のためのゲーム理論入門」創文社
-
岡田章「ゲーム理論 新版」有斐閣
  ii)
初級 (大学2年)
授業の到達目標
日常身近な経済・社会現象を多く取り扱い,これをゲーム理論で捉えていく。これらを通じ,ゲーム理論に関する基礎的な知識を習得する。
授業の概要
ゲーム理論が経済学等においてどのように利活用されているかを学ぶ。
さらには,受講者の理解の定着を促すため,特に講義中に取り上げたゲームにおける実験の実施や演習問題を課す。
ゲーム理論の概要、まず、ゲーム理論とはどのような学問で、この理論を用いると、どのようなことが理解・予測できるのかなどについて説明した。
次に、ゲーム理論における有名なゲームである「囚人のジレンマゲーム」を取り上げ、一見すると、各囚人は協力した方が良いと思われる場面であっても、各囚人は非協力的な行動を取ってしまう。
この考えを利用して様々な制度設計やどのように各経済主体を協力させることができるのかなどに実社会において応用されている。
また、どのくらいゲーム理論は行動を予測できるのかについて、「トランプゲーム」に関する実験について説明し、理論と実験結果が合致していることを確かめた。
この実験のみならず、スポーツの分野においても、ゲーム理論での説明ができると指摘されている。
実際の社会制度設計での活用されている理論として、オークション理論とマッチング理論を取り上げ、どのようにゲーム理論が利用されているのかについて説明した。
具体例として、各3人からなる2つのグループにおけるマッチング方法について説明した。
最後に、これから人工知能が社会に浸透していくと考えられているが、これの理論としてもゲーム理論が活用されており、人間が関係するものに関しては、ゲーム理論の考えが重要となる。
非協力ゲームにおける戦略形ゲームのゲームの解の導出方法を説明した。
まず、コンビニの出店競争の事例を用いて、支配戦略を説明し、次に短期的な成果主義に関するゲームも同様に、支配戦略の考え方を用いてゲームの解を導出した。
ただしこの後者のゲームは、囚人のジレンマ型のゲームの構造をしており、個人の合理性と社会全体の合理性の矛盾を表しており、環境問題や企業間の価格競争を説明する際によく利用されている。
また、支配戦略がないゲームにおいて、各主体の最適反応戦略を求め、ゲームの解を導出した。
これはナッシュ均衡は、すべてのプレイヤーが最適反応戦略を取り合う戦略の組であることから導出した。
前回のナッシュ均衡の求め方をそのまま適用すると、じゃんけんゲームなどに見られるようなゲームにおいては、ナッシュ均衡が存在しないこととなるが、混合戦略の範囲内で考えると、ナッシュ均衡は存在することが知られている。
そこで戦略の数が2つの場合のゲームを用いて、この混合戦略の導出法を説明した。まず数値例を用いて、期待利得の計算方法などを基本的な計算方法を示し、またこの内容を一般化し、どのような確率の値をとるとき、どちらの戦略が良いのかという条件を導出した。
最後にvon Neumannが示したミニマックス定理を紹介し、ゼロサムゲームにおいての均衡の導出方法を解説した。
参入阻止ゲームを例にとり、どのようにゲームの木を書くのか、各プレイヤーの利得の見方などを展開形ゲームにおける基本的な事項について説明した。
また、バックワードインダクション(後向き帰納法)を用いた展開形ゲームにおける解の導出法、サブゲーム完全均衡について説明した。
さらには、景気が良くなる場合と悪くなるケースが確率的に決まるというような偶然手番がある場合の展開形ゲームの場合も取り上げた。
第1回から第4回目まで行った内容に関する演習を行った。具体的には、標準形ゲームに関しては、「価格競争ゲーム」、混合戦略に関しては、「硬貨合わせゲーム」、「じゃんけんゲーム」、展開形ゲームに関しては、「ライバル雑誌の特集記事」 をそれぞれ取り上げた。
まず、繰り返しゲーム理論とはどのようなもので、どのようなものから構成されているのか、そして、どのようなことが分かるのかなど繰り返しゲーム理論に関する概要を説明した。
また、今までの標準形ゲームと展開形ゲームとの違い、その特徴を確認し、その過程で必要な等比級数の和について解説した。
次に、具体例として、繰り返し囚人のジレンマゲームを取り扱った。
ここでは、全て協調するような戦略(all-C)、全て裏切るような戦略(all-D)、トリガー戦略の3つを取り上げた。
各戦略を採用した際にの利得を計算し、どのような条件においてトリガー戦略において各プレイヤーの協調行動が採用されるのか、その条件を導出した。
有限回繰り返し囚人のジレンマゲームでは、協調行動は見られないが、無限回繰り返し囚人のジレンマゲームにおいては、協調行動はナッシュ均衡となる場合が有り得る。最後に個人合理的な利得ベクトルは、繰り返しゲーム理論のナッシュ均衡点によって実現されるというフォークの定理を紹介した。
情報の非対称性をテーマとして、特に逆選抜、シグナリングをゲーム理論として扱う「不完備情報ゲーム」について取り上げた。
まず、情報の非対称性がある市場においてどのような性質があるのかについて経済学的に分析した。
この不完備情報ゲームは、ベイジアンゲームとも呼ばれ、その背後には「ベイズの定理」が関係しており、この定理に関しても説明した。
この不完備情報ゲームにおける例として、コンビニの出店競争に関する事例を用いて、どのように取り扱ったら良いのかなど、解の出し方まで説明した。
次に、隠された性質の代表例である逆選抜がある場合の対処法であるシグナリングを取り上げた。具体例として、能力に関して情報の非対称性のある労働者の雇用に関するものを取り上げた。このような情報の非対称性がある状況において、経営者は労働者を雇用しないこととなるが、労働者は「資格取得」をするのか、しないのかの選択した上で、経営者が労働者を雇用するかどうかを決定する。Lタイプの労働者は資格を取得しないことが最適であるが、Hタイプの労働者が資格を取得する場合と、資格を取得しないの2つの場合におけるが完全ベイジアン均衡点となる条件を導出した。
隠された行動に関して、プリンシパル=エージェント問題を取り上げた。固定賃金契約においては、プロジェクトは行われないことなるが、ボーナスを導入し、ある条件(インセンティブ両立条件、参加条件)の下でこのプロジェクトにおいて、労働者・経営者にとって最適な条件を導出した。
ゲーム理論において、沢山のゲームが出てくるが、最適応答反応がどの戦略であるのかをという視点から捉えると、多くのゲームは4つに分類することができる。
例えば、寡占市場におけるその代表的な経済モデルであるクールノー市場は、協調行動を一種のカルテルとして、囚人のジレンマ型のゲームであると捉えることができる
また、共有地の悲劇と呼ばれるゲームにおいても、同様に各個人の利己的な行動により、共有地が崩壊してしまう可能性がある。
そのため、各経済主体の協調的な行動をどのように導くのかに焦点が当てられることになる。
このように、経済・社会現象をゲーム理論として捉えることにより、ゲーム理論における知見を活用した解決策を考えることができるようになることもある。
協力ゲーム理論について例を用いて、特に、協力ゲーム理論の解概念であるコア、シャープレイ値について具体例を用いて、定義やその導出法について説明した。
期待効用理論について取り上げ、これを用いて、各経済主体のリスクに対する態度を考察した。
ここでは、具体的に3つの効用関数、リスク回避型、リスク選好型、リスク中立型を取り上げ、どのような効用関数の形状としているのかを確認した。
また、この期待効用理論が成り立たない事例であるサンクトペテルブルクのパラドックス、アレのパラドックスを取り上げた。
さらには、近年経済学に心理学的な要素を取り入れたとして注目されている行動経済学、その中でも代表的な理論であるプロスペクト理論を説明した。
交渉ゲームについて取り上げた。この交渉ゲームにおいては、公理的アプローチと戦略的アプローチの2つがある。まず、公理的アプローチにおける代表的な理論であるNashの交渉解について取り上げ、具体例を用いて、交渉解の具体的な導出法を紹介した。
次に、戦略的アプローチにおける代表的な理論である提案応答ゲームについて取り上げ、
最後通牒ゲーム、このゲームの実験結果もあわせて紹介した。また、これの応用として、2段階の交渉問題を定式化、考察した。
まず、非協力ゲーム理論と異なるところを説明し、この進化ゲーム理論においてはナッシュ均衡の解釈も異なる。
ここでは、通常の解釈である「合理性」を仮定せず、「マスアクション(質的応答)」というたくさんの人に選択された戦略が均衡であるという考え方を利用している。
また、進化ゲーム理論独自の均衡概念である進化的に安定な戦略を説明した。
次に、4つのゲーム、囚人のジレンマ、システム選択、タカーハトゲーム、男女の争いのゲームを進化ゲーム理論を用いて、どの戦略が進化的に安定な戦略(ESS)等を考察した。
最後に、進化ゲーム理論で使われるダイナミクスである、レプリケーター方程式、確率過程を紹介し、最後通牒ゲームを進化ゲーム理論から捉える方法とその解釈について説明した。
新聞記事を基にして,日本においても携帯電話の周波数オークションの導入について議論がされており,また欧米ではこのオークションはゲーム理論の考えを用いて,制度設計されていることを紹介した。
このような現実社会における制度設計を行うために,ゲーム理論が活用されている研究分野はメカニズムデザイン理論と呼ばれている。
このメカニズムデザインと通常のゲーム理論の違いを説明した。最後に,問題演習とその解説を行った。
実験経済学の意義等を説明した後、実際に平均値推測のゲームを行った。
 
REF.
-
岡田章「ゲーム理論・入門 新版」有斐閣アルマ
-
岡田 章, 加茂 知幸,三上 和彦,宮川 敏治「ゲーム理論ワークブック」有斐閣
-
ロバート ギボンズ「経済学のためのゲーム理論入門」創文社
  iii)
中級 (大学3, 4年, 大学院修士レベル)
  Ch.0. はじめに (Introduction)
【PDF (UP: 2010/4/19)】
第I部 非協力ゲーム理論 (Non-cooperative Game Theory)
  Ch.1. 戦略形ゲーム
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.2. 展開形ゲーム
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.3. 完全均衡点
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.4. 情報不完備ゲーム
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.5. 繰り返しゲーム
【PDF (UP: 2010/4/19)】
第II部 進化ゲーム理論 (Evolutionary Game Theory)
  Ch.6. 進化的に安定な戦略
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.7. Replicator Equation
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.8. 確率的進化ゲーム理論
【PDF (UP: 2010/4/19)】
第III部 協力ゲーム理論 (Cooperative Game Theory)
  Ch.9. 提携形ゲーム
【PDF (UP: 2010/4/19)】
  Ch.10. コアの理論
【PDF (UP: 2010/4/19)】
 
REF.
-
Robert Gibbons "Game Theory for Applied Economists", Princeton Univ Press
-
Martin J. Osborne and Ariel, Rubinstein "A Course in Game Theory", The MIT Press
-
岡田章「ゲーム理論」有斐閣
-
Jorgen W. Weibull "Evolutionary Game Theory", The MIT Press
  iv)
Cournot市場から始めるゲーム理論入門 (大学2, 3年)
 
【PDF (UP: 2010/4/26)】,
 
【Slide (UP: 2010/4/26)】
 
REF.
-
岡田章「ゲーム理論」有斐閣
  v)
Introduction to Evolutionary Game Theory (進化ゲーム理論入門) (大学3, 4年, 大学院修士レベル)
1. Weibull (1995) を読む
【PDF (UP: 2010/4/19)】,
【Slide (UP: 2010/4/19)】
 
REF.
-
Jorgen W. Weibull "Evolutionary Game Theory", The MIT Press
Industrial Organization (産業組織論) (大学2年)
授業の到達目標
現実の企業の行動,政府の規制政策の意味,それらがもたらす経済的帰結等について理論的に分析し,理解できるようになる。
授業の概要
ミクロ経済学やゲーム理論の基礎的な理論を用いて,寡占市場,カルテル等現実の経済社会で起こる経済現象や政府における競争政策等を分析する手法を習得する。またわが国の企業や産業の現状や特徴等を見ていく。特に講義中の演習問題や課題を課すことにより,受講者の理解の定着を促す。
現実の企業行動や市場は、完全競争市場のいずれかの条件を満たしておらず、不完全競争市場である。
産業組織論はこの市場を取り扱うため、「現実志向的」、「政策志向的」な側面を持つ。
19世紀後半アメリカでは独占企業・巨大トラスト(企業連合)による価格つり上げが行われており、社会問題化していたと言われている。
しかし、完全競争市場を仮定する当時の経済学では、このような社会問題に対しての解決策が提示できないでいた。
そこで、法律による規制も行われ、経済理論に関しても、1930年ごろから独占市場や不完全市場に関する経済学的な分析ができるようになっていった。
そこで、今までの産業組織論の学説を紹介した。
さらに、日本の競争政策に関しても、小泉内閣の所信表明演説(第151回国会)や独占禁止法施行70周年を迎えるに当たっての公正取引委員会委員長談話を用いて、今までの日本における競争政策に関しても紹介した。
これから産業組織論を学んでいく際、ミクロ経済学の知識が必要となる。
そこで、ミクロ経済学の基本的なところをできるだけ数式を用いず、復習を行った。
まず、消費者の行動を考え、効用関数、無差別曲線、支払い許容額から需要曲線を導出した。
次に、生産者の行動を考え、平均費用、限界費用等の費用概念を整理し、これらから供給曲線を導出した。
これらの需要曲線と供給曲線の交わるところが市場均衡と言われており、またこの均衡点において、消費者余剰と生産者余剰の和である総余剰が最大となる。
ただしこの市場は万能ではなく、費用逓減産業における市場の失敗や政府の失敗があることが指摘されている。
独占市場においては、企業は価格や数量の変更を行うことができることから、市場支配力がある。
このような市場が独占状態となるのは、莫大な固定費が存在し、規模の経済性が働く場合やネットワークの外部性がある場合などだと指摘してされている。
例えばこのような独占市場があると、関連市場においても独占のテコを用いることにより、競争減殺効果が生じる場合がある。
そこで、独占市場を経済学から捉える方法について、説明した。
まず、独占企業の最適な行動を数値例で確認した後、一般的な状況における条件、限界収入=限界費用(MR=MC)を導出した。
次に、余剰分析をも行い、独占のときには死加重が発生することが独占市場の非効率性があることを確認した。
独占市場における価格規制について取り上げた。
代表的な規制の考え方である限界費用価格規制、平均費用価格規制、2部料金制、公正報酬率規制(総括原価方式)を紹介し、それぞれの特徴を説明した。
またこのような規制に関して、政府の失敗が指摘されている。
そのため、近年では、インセンティブ規制(プライス・キャップ規制、ヤードスティック規制、競争入札制)が注目されており、それぞれの特徴を説明した。
寡占市場について取り上げた。まず、どのような市場が寡占市場なのか、寡占市場の定義に関する説明、また数量競争モデルであるクールノー競争市場、価格競争モデルであるベルトラン競争の概要について説明した。
次に、クールノー競争における数値例、また関数が一般的な状況におけるクールノー均衡を導出した。さらに、企業数がnの場合のクールノー均衡を導出し、また、企業数が無限大となると、完全競争市場となる「クールノーの極限定理」を示した。
最後に、牛丼チェーンの価格競争の推移を紹介した。
戦略を決定する手番に先手と後手があるような寡占市場のモデルとして、シュッタケルベルグ競争が知られている。
まず、このシュッタケルベルグ競争の定義や計算例を紹介し、この競争においては、先手(リーダー)になると生産量が大きくなり、利潤も大きくなることを確認した。
次に、寡占市場とゲーム理論との関係で整理し、クールノー市場は戦略形ゲーム、このシュッタケルベルグゲームは、展開形ゲームとして扱うことができる。
またクールノー競争は、通常の価格競争をしているときを非協力的な戦略を採用しており、協調的なの戦略を採用しているときにおいては、企業間でカルテルを結んでいる状態だと捉え、囚人のジレンマゲームとして取り扱うことができる。
最後に、展開形ゲームにおける例として、チェーンストアのパラドックスを取り上げた。
このゲームでは、既存企業は新規企業の参入をさせないような行動を取ると考えがちであるが、ゲームの解はそうではなく、「共存」を選ぶということであった。
それでは、どのようにすれば、参入を阻止することができるのか、1つの答えとして、新規参入した場合に何か対抗措置をとるということをコミットメントを行うことでこれを阻止できる場合があることを説明した。
市場における参入と退出について取り上げた。
経済学的には、企業の参入に関して正の利潤が得られる限り続く。
ただし、新規参入の発生は既存企業にとっては利潤を減少させることとなる。
そのために既存企業は積極的に設備投資を行うこと、費用に関するシグナリング、またブランド増殖など、既存の企業は参入阻止行動を取ることも考えられる。
サンクコストやネットワークの外部性などが参入障壁となり得る。
しかし仮に参入障壁があるような独占的な市場であっても、イノベーションを通じて企業の新規参入があることが経験的に知られていることを紹介した。
このような参入に関する影響を経済学を用いて考察する場合、参入障壁がなく、自由に参入が行えるモデルであるコンテスタブル市場が取り上げられる。
この市場においては、独占市場であっても、価格が低下し、社会厚生が高くなるということが知られており、この理論は規制緩和を行う理論的根拠として影響を与えている。
情報の非対称性をテーマとして、「不完備情報ゲーム」について取り上げた。
まず、情報の非対称性がある市場においてどのような性質があるのかについて経済学的に分析した。
この不完備情報ゲームは、ベイジアンゲームとも呼ばれ、その背後には「ベイズの定理」が関係しており、この定理に関しても説明した。
この不完備情報ゲームにおける例として、コンビニの出店競争に関する事例を用いて、どのように取り扱ったら良いのかなど、解の出し方まで説明した。
次に、隠された性質の代表例である逆選抜がある場合の対処法であるシグナリングを取り上げた。
具体例として、能力に関して情報の非対称性のある労働者の雇用に関するものを取り上げた。
このような情報の非対称性がある状況において、経営者は労働者を雇用しないこととなるが、労働者は「資格取得」をするのか、しないのかの選択した上で、経営者が労働者を雇用するかどうかを決定する。Lタイプの労働者は資格を取得しないことが最適であるが、Hタイプの労働者が資格を取得する場合と、資格を取得しないの2つの場合におけるが完全ベイジアン均衡点となる条件を導出した。
隠された行動の一例である、労働者の努力水準が分からないというプリンシパル・エージェント問題について取り上げた。固定賃金契約においては、プロジェクトは行われないことなるが、ボーナスを導入し、ある条件(インセンティブ両立条件、参加条件)の下でこのプロジェクトにおいて、労働者・経営者にとって最適な条件を導出した。
次に、製品差別化について、取り上げ、これの定義、独占的競争市場の説明、この市場の性質、どのような場合、この市場を取り扱うのか。
製品差別化があるベルトラン競争について取り上げ、製品差別化の影響を調べた。
また、競合企業が値上げをすると、自らの製品も値上げして対応するという、戦略的補完性を取り上げた。
このような行動を取ると、追随者である企業は自社の利益をより大きくすることができる。
価格差別について取り上げた。
3種類価格差別が知られており、各消費者に対して、個別の価格と商品を供給するという第1種価格差別は最も企業は最も収入を上げることができる。しかし、このようなことは第1種価格差別はあまり現実的ではない。
そこで現在、企業が行っている価格差別の方法である「市場分割」、「2部料金制」、「数量割引」、「抱き合わせ」を紹介した。
ただしこのような価格差別を行うと、市場における公正な競争を阻害するおそれのあるものは、独占禁止法において禁止されている。
市場分割に関して、どのような条件のもとで企業の収入が上がるのかを調べた。
需要の価格弾力性の値が1よりも大きい場合、価格を下げ、需要の価格弾力性の値が1よりも小さい場合、価格を上げることで収入を増やすことが分かる。
また、同時にこの場合市場は効率的となる。
最後に、第2種の価格差別である「2部料金」を紹介し、これを用いると、生産者は完全価格差別を達成することができることを紹介した。
共謀と協調戦略について取り上げた。この共謀はカルテルに該当し、このカルテルに関する基本的な事柄や実際の事件を新聞報道を用いて紹介等した。次に、このカルテルの弊害、なぜこのカルテルが発生するのか、カルテルが産まれやすい環境やこのカルテルを消滅させる制度(課徴金減免制度)について、経済学を用いて捉えた。このような寡占市場は繰り返しゲーム理論を用いて捉えることができ、各企業が自発的に協調的な行動を生み出しやすい条件を説明した。
まず、合併件数の動向や合併の類型について説明した。
次に、合併の中でも水平合併において、クールノー市場においては企業合併が行われると、企業数が減少することにより、価格は上昇する。
これに伴い産業全体の生産量、消費量が減少する。また、合併企業の生産量、シェア及び利潤は減少する。
企業が合併を行う理由として、まず市場支配力の増加が考えられ、単独効果(価格引き上げ)、カルテル等の協調行動が容易となる。市場支配力増大の例として、携帯電話料金を合併との関係で見た。
次に、効率性の増大として、規模の経済や範囲の経済なども見られる。合併にはこのような誘引があるが、消費者に対して、影響があることから合併に関して規制がある。
そこで合併における市場画定の仕方やどのような場合、競争の実質的制限があり、規制が適用されるのかについて紹介した。
最後に、このような合併に関して、「価格の上昇による余剰の減少 < 費用の低下による余剰の増加」となるような合併は認めるべきであると意見があることを紹介した。
垂直的取引の特徴や典型例を取り上げ、各産業、地域によってはも異なることを確認した。
また、垂直的な統合を行うことのメリットとデメリットを確認した。
そもそも垂直的統合は関係特殊投資があることや2重の限界化の解消、また(垂直的・水平的)外部性解消などの要因から行われると言われている。
この垂直的統合のメリットを活用するため、垂直的な取引制限を行う場合があり、これの代表例として、再販売価格維持、テリトリー制、抱き合わせ販売、排他条件取引があることを紹介した。
例えば、再販売価格維持とテリトリー制におけるブランド内競争の制限の可能性や抱き合わせ販売におけるブランド間における競争が阻害される可能性を示した。
クレジットカード・電子マネーなどに代表される多面市場について取り上げた。
この多面市場は,これ以外にも新聞・雑誌における広告,ゲームやスマホ向けのアプリ,ショッピングモールのテナント,不動産仲介なども多面市場である。
この多面市場は間接ネットワーク効果がある,またビジネスを成立させるためにはクリティカルマスを獲得しなければならないという特徴を持っている。
ここ20年、IT企業が躍進しているが,これらのIT企業の市場もまた,多面市場である。
この多面市場は市場に備わっている特徴から寡占化が進みやすいことが知られている。
最後に,略奪的価格戦略の一つである不当廉売について説明し,2面市場において必ずしも不当廉売と捉えることはできないのではないかという議論があることを紹介した。
ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を導入し,
その具体例として企業結合ガイドラインにおけるセーフハーバーの条件等を紹介した。
 
REF.
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泉田成美,柳川隆「プラクティカル産業組織論」有斐閣アルマ
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柳川隆,川濱昇「競争の戦略と政策」有斐閣
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長岡貞男、平尾由紀子「産業組織の経済学 第2版: 基礎と応用」日本評論社
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小田切 宏之「競争政策論 第2版」日本評論社
なお,経済理論のみならず,現実の企業行動やこれの経済社会への影響の理解を深めるためにも経済法も併せて勉強されたい。
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根岸哲、舟田正之「独占禁止法概説 第5版」有斐閣
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川濵昇、瀬領真悟、泉水文雄、和久井理子「ベーシック経済法 -- 独占禁止法入門 第4版」有斐閣アルマ
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金井貴嗣、泉水文雄、武田邦宣編「経済法判例・審決百選 第2版」別冊Jurist
Macroeconomics (マクロ経済学)
 
REF.
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中谷巌「入門マクロ経済学(第5版)」日本評論社, スタディガイド
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齋藤誠「新しいマクロ経済学―クラシカルとケインジアンの邂逅」有斐閣
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脇田 成「マクロ経済学のパースペクティブ」日本経済新聞社
Economic Policy (経済政策論)
授業の到達目標
基礎的な経済理論と最新の経済情報・データ等を用いて,日本経済が直面している課題とその課題を解決するための経済政策について論じられるようになる。
授業の概要
今まで行われてきた経済政策を概観し,ミクロ経済学やマクロ経済学等の基礎的な経済理論を用いて,経済政策の仕組みやその政策が有効である為の前提条件等を習得する。また現在日本経済が直面している課題とその課題を解決するための経済政策について考察する。特に講義中に課題を課すことにより,受講者の理解の定着を促す。
  経済政策は市場の失敗など市場メカニズムでは解決できない諸問題を是正するために存在する。この経済政策の役割として、主に①資源配分、②所得再分配、③経済安定化の3つある。この考えを用いて、具体的にアベノミクスに関する経済政策を考察し、各経済政策の特徴を確認する。
  また、特に一国の経済レベルにおける理論的に考え得る経済政策として、「三面等価の原則」から「財政政策」、「金融政策」、「税制・制度」、「貿易政策」があることを確認する。
  主に公共事業の効果等を測定する手法である乗数効果について取り上げる。近年、この乗数効果の低下が指摘されているが、この要因として、「貯蓄率の上昇」、また「輸入の増加」、そして「クラウディング・アウトの発生」等を取り上げ、どのような波及プロセスを通じて、どの程度乗数効果が低下するのかを数値例を通じて、確認する。
同時に、減税における乗数効果についても取り上げ、公共事業におけるものと特徴の比較を行い、整理する。
また、財政には自動安定化機能、ビルトインスタビライザーが備わっており、失業保険や税収などに代表される。
  政府と日本銀行における政策協調の問題を契機とし、IS-LM分析を用いて、財政政策、金融政策における効果について説明する。
特に図を用いて、なぜIS曲線が右肩下がりで、LM曲線が右肩上がりなのかを確認する。その上で、財政政策や金融政策を行った際のIS曲線、LM曲線の変化を確認し、どのようにGDPが増加するのかを理解する。
特に財政政策を行うと、金利が上昇し、これにより投資の意欲が阻害されるため、経済政策の効果が限定的となる。(クラウディングアウトの発生)
よってこれを解消するために、金融政策と共に行うというポリシーミックスによる効果が高いことが理論的に推測される。
  IS-LM分析を復習した上で、物価水準と国民所得との関係を考察することができるAD-AS分析に関する基礎的な内容を説明する。
まず、AD曲線の導出、特徴を図を用いて、確認する。次に、AS曲線についても同様に、導出、特徴等を見出す。特にこのAS曲線においては、学派の違いにより、AS曲線の形状が異なり、経済政策の効果が異なることが知られている。
また、古典派とケインジアンの違いやこれらから派生した理論についてまとめる。
  まず、フィリップス曲線の基本的な事項について解説し、日本においても成り立っていることを確認する。
このフィリップス曲線へのケインジアンによる解釈として、労働市場において、超過需要がある場合、低失業率、名目賃金の上昇圧力がある。
一方、超過供給がある場合、高失業率、名目賃金の下落圧力があることからフィリップス曲線が右肩下がりであると捉えることができる。
また、このフィリップス曲線へのマネタリストによる解釈として、例えば、P>Peのとなるとき、実質賃金が上昇すると勘違いし、労働供給を増加させ、高雇用、低失業が実現する。
一方、P
  次に、短期フィリップス曲線を導入し、期待物価上昇率との関係からもこのフィリップス曲線を捉えることができる。
そして、長期フィリップス曲線について説明し、経済政策の効果について考察し、短期においては、貨幣錯覚に陥ることから有効であるが、長期においては無効である。
さらには、古典派における合理的期待形成仮説においては、短期的にもフィリップス曲線が垂直となることが確認する。
  インフレ供給・需要曲線について取り上げる。フィリップス曲線に関して基礎的な内容を復習した上で、インフレ供給曲線に関して、オークンの法則とフィリップス曲線から導出する。
次に、インフレ需要曲線に関しては、IS-LM曲線での経済政策の効果を抽象化したものから定式化できる。静学的期待により、均衡が変化する場合を考察し、均衡が遷移するという調整プロセスのメカニズムについて確認する。
さらには、長期均衡において、経済政策の効果として、金融政策・財政政策ともに短期的には、有効であるが、長期的にはフィリップス曲線が垂直であるように、無効であることを確認する。
  新古典派経済成長理論における基本的な性質を図を用いて、理解し、特に貯蓄率が上昇した場合、人口成長率が鈍化した場合における一人当たりGDPへの影響を図で確認する。
この理論に基づけば、経済成長は基本的な関係式に基づき行われる。そのため基礎条件が共通すれば、長期的には格差は消滅するということとなる。
これは収束論と言われているが、日本の都道府県における成長率は実証的にこの収束論に従っているということを確認する。
  しかし、現実の経済社会を見ても先進国と発展途上国との間に経済格差が生じているということが見受けられる。
このことを新古典派経済成長理論から説明すると、資本が十分に普及していない、資本装備率が低い社会においては、収穫逓増が働いているとして捉えると、低位均衡と高位均衡という複数均衡が生じていることになる。
アメリカや日本のような先進国では、ビッグプッシュといわれるような以前に、大きな社会資本の拡充があったから、格差が生じていると解釈することができる。
最後に、全生産要素生産性(TFP)を導出し、日本と米国・欧米の水準の比較をし、日本のものが低いということを確認する。
このように一般的な経済成長理論について、確認した後、これを用いてアベノミクス 新・第3の矢について、この新古典派経済成長理論の枠組みで捉える。
  市場失敗と政府の役割を考えるため、まず完全競争市場について定義し、この市場における市場メカニズムについて取り上げる。
この市場メカニズムは有用な性質を有しているが、失敗する場合があることを触れ、その例を挙げる。
  また余剰分析を取り上げ、完全競争市場における消費者余剰、生産者余剰、総余剰、それぞれについて説明する。
これを用いると、完全競争市場において、市場均衡において総余剰が最大化されることが分かる。
経済政策が3つのケース(上限価格規制、従量税、数量統制)を余剰分析を行い、各余剰の位置、面積と死加重が発生することを確認する。
  外部性による市場の失敗と政府の役割に関して、取り上げる。
例えば、養蜂業者と果樹園の関係に代表されるような、特に他人へ良い影響・利益を与えるものを正の外部性といい、また、公害・騒音などに代表される他人に被害を及ぼすようなものを負の外部性という。
このような外部性がある市場における供給曲線は、社会的限界費用=(私的)限界費用+限界損失として表され、この場合、過剰生産・供給となってしまうことが分かる。
この限界損失をピグー税率として、政府が税金を課し、この損失分を政府が補填する場合を考えた。このピグー税は、例えばロンドンの混雑税へ応用されており、ある程度効果があったことが統計データから確認される。
  次に、ピグー補助金として、最適値よりも過大な生産量から生産量を1単位減らすごとに、限界損失に等しい補助金を与えること場合を考え、余剰分析を行うことにより、ピグー課税と補助金の総余剰が等しくなることを確認する。
この他、効率的な生産量を達成する手法の1つとして、コースの定理、排出権取引市場などに関して紹介する。
  国防、警察・消防サービスなどに代表される公共財について取り上げる。特にこの公共財は、消費の非競合性、消費者の非排除性を持ち、このような性質であるため、競争市場ではうまく供給することができず、過小供給となる。
そのため、政府は税金を課すことにより、公共財の供給にかかる費用を消費者から徴収することができるので、社会的に望ましい量の公共財を提供することが可能である。
このような公共財がある市場における最適供給は、社会的限界便益と限界費用とが等しい場合であり、この均衡はリンダール均衡と呼ばれている。
また、数値例を用いて、説明した。ただし、このような公共財の自発的供給問題においては、個人の虚偽の申請の場合があり得る。民主主義においては、中位投票者の望む政策が実施されるという中位投票者定理が知られており、多数決投票を行うと、社会的に望ましい公共財の供給量が決まる場合がある。ただしこの場合においても、高い限界費用の負担が強いられる場合には、公共財を少なく受容し、その逆においては、高く受容するということがある。
  独占市場における企業の最適な行動を数値例で確認し、一般的な状況における条件、限界収入=限界費用(MR=MC)を導出する。
次に、余剰分析も行い、独占のときには死加重が発生することが独占市場の非効率性があることを確認する。
また、このように市場が独占状態となるのは、莫大な固定費が存在し、規模の経済性が働くためであると考えられている。
  最後に、政府における価格規制について、代表的な3つの価格規制である (i) 限界費用価格規制、(ii) 平均費用価格規制、(iii) 2部料金価格規制を取り上げ、それぞれの特徴を紹介する。
  情報の非対称性に関して、中古車市場に代表される「逆選択」と保険の存在により、経済主体の行動が変化するという「モラルハザード」について事例を用いて、説明する。
この情報の非対称性の存在により、市場の失敗が起きる場合があるが、これの対処法として、① シグナリング、② 自己選択、③ スクリーニング があげられ、それぞれ特徴を確認する。
また、政府が行っている公的年金制度などの制度は逆選択が起き、市場の失敗の可能性があるから行われているとも捉えることができる。
  次に、期待効用理論について取り上げる。この期待効用理論を用いて、リスクに対する態度を考察する。ここでは、具体的に3つの効用関数、リスク回避型、リスク選好型、リスク中立型を取り上げ、どのような効用関数の形状としているのかを確認する。
  寡占市場について取り上げた。特に、クールノー競争、ベルトラン競争、シュタッケルベルグ競争モデルについて、これらの特徴をまとめ、これらの市場における均衡の導出方法について、詳しく確認する。
寡占市場において、ライバル企業と共に共謀(カルテル)や合併によりし、独占的な利潤を得る誘因が存在する。そのため、仮に企業がこのような共謀(カルテル)等を行うと、消費者余剰が減少する可能性があるが、課徴金減免制度などの制度による共謀(カルテル)を崩壊させる制度や合併における審査が存在し、できるだけ企業間の競争を促す制度となっている。
  最後に、寡占市場における市場支配力を図るため、ハーフィンダール指数を用いて、各市場の寡占度を見ることが可能であり、この指数を持ちて、合併の審査にも活用されている。
 
REF.
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岩田規久男, 飯田泰之「ゼミナール 経済政策入門」日本経済新聞社
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神取道宏「ミクロ経済学の力」日本評論社
International Economics (国際経済学)
授業の到達目標
基礎的な国際経済学と最新の経済情報・データ等を用いて,近年議論されているFTAやTPP等の国際経済に関する話題に対して,論理的に思考できるようになる。
授業の概要
わが国における国際貿易の歴史や制度等に関すること,また基礎的な経済理論(特にミクロ経済学・マクロ経済学)を用いた国際経済学を習得し,国際経済問題の背後にあるメカニズムを理解する。さらにはわが国が直面している課題を理解・考察する。特に講義中の演習問題や課題を課すことにより,受講者の理解の定着を促す。
  貿易に関する統計データを用いて、貿易額の特徴、経常収支と経済成長や貿易構造の変化について取り上げ、日本におけるこれまでの推移と現状を確認する。その背景にある国際貿易に関する歴史に触れ、どのような流れで今日に至っているのかを確認し、日本が直面する課題について考察した。
  また、実際製造業におけるサプライチェーンの構造変化の歴史と国際貿易に係る事項との関係で説明し、実務において国際貿易を活用した経済分析の手法の一部を紹介する。
  ある市場において、輸入を自由化とすると、価格の低下を伴い消費者にとっては、外国からより低価格の商品が輸入され、よい多くの商品を購入する機会が増えるため、歓迎される。
しかし、生産者にとっては、他国から安い製品が輸入されると、自国で生産した製品が売れなくなり、収入が減少する可能性が高まる。この両者の利害を比較衡量するため、余剰分析を用いて、貿易の自由化について考察する。
また、1国に2産業ある場合の貿易の利益についても考察する。
  1国に2産業ある場合を考え、比較生産費説に基づき、各国の貿易パターンを考察する。
この比較生産費説は、1国における各商品の生産費の比を他国のそれと比較し、優位の商品を輸出して劣位の商品を輸入すれば双方が利益を得て国際分業が行われるという説のことである。
この説の具体例として、日本とアメリカにおける「米」と「半導体」の貿易について、どの産業が比較優位であるのかを確認する。その結果、日本は「半導体」に関して、比較優位であり、アメリカは「米」に関して、比較優位であることが分かる。
  ヘクシャー=オリーン理論の基本的な考え方等について説明する。また、この理論に関連する有名な3つの定理である「リプチンスキーの定理」、「要素価格均等化定理」、「ストルパー=サミュエルソンの定理」を図を用いて、定理の内容を確認する。最後に、経済学者のレオンチェフはアメリカの産業連関表を用いて、輸出財と輸入財における資本集約度を求め、これからアメリカでは、資本集約財を輸入して、労働集約財を輸出していることを見出した。つまり、この実証研究はヘクシャー=オリーン理論とは異なる結果が得られている。ただし、労働者の質などの違いからこのようなことがあるのだと現在では理解されている。
  貿易の三角形について、基本的な特徴について説明し、輸入関税がある場合、自由貿易のときに比べ、この貿易の三角形が小さくなることを確認する。
  また、余剰分析において、関税がある場合、生産補助金を行った場合と自由貿易のときと比較を行い、関税を行った方が社会厚生が低くなることを確認する。
  この幼稚産業保護は途上国の工業化戦略の1つであり、輸入品に対して、高い関税をかけるなどし、製造業を保護するための貿易・通商政策のひとつである。第2次世界大戦後、発展途上国は高関税率を課し、自国の産業を保護する政策を採用していたが、
近年、世界的な自由貿易の流れにより、関税率を引き下げる方向に進んでおり、GDPに占める貿易の割合は増加している。
この幼稚産業保護を余剰分析を行い、どのような条件が揃えば、この政策を採用した方がよいのかというミル=バステーブルのテストについて説明する。
  また、発展途上国がこの貿易・通商政策を行う背景としてぺティ=クラークの法則という、経済社会発展につれて、第一次産業から第二次産業、第二次から第三次産業へと就業人口の比率および国民所得に占める比率の重点がシフトしていくという経験法則が知られている。
その他、途上国における不完全な資本市場や政治体制等の問題からこのような幼稚産業保護の政策が必要であると言われている。
  規模の経済や収穫逓増の特徴を持つハイテク産業などの特定の産業を保護・育成・進行し、経済厚生を高めようとする貿易・通商政策である「戦略的貿易政策」を取り上げる。
この政策は、実際1990年代の米・クリントン政権において採用されていた貿易政策と言われている。
特にボーイング(米)とエアバス(ヨーロッパ)がジェット機の開発・生産を行う国際的複占市場における企業間競争と政府の役割について考察する。
特に、① 政府の介入がないケース、② エアバスに対する補助金があるケース、③ ボーイングに技術的な優位性がある場合、そして④ 3つ目の状況に加え、エアバスに対して補助金を行うという4つのケースをそれぞれゲーム理論における利得表を用いて、各政府における最適な戦略、ナッシュ均衡を求めた。
また、これを理解するため、ゲーム理論とその解概念であるナッシュ均衡の求め方について再確認する。
  リカードの比較優位では、前提としていない「国際要素移動」と「産業内貿易」について取り上げる。
まず、国際要素移動に関して、資本の移動について、近年の日本における投資フローとストックや国際投資の収益率に関する統計データを紹介する。
資本の国際移動に関する余剰分析を行い、総余剰が増加することが確かめる。そして、多国籍企業の立地と内部化の問題を取り上げ、企業が海外進出する際の条件を求める。
  次に、産業内貿易について取り上げ、これに関する国際間比較に関する統計データの紹介や産業内貿易が行われている要因を分析する。
  国際収支について取り上げ、本統計における基本的な事項を確認し、また日本における経常収支、金融収支等の動向を確認する。
これらかわ分かる日本の経常収支の構造変化について整理する。
  次に、外国為替市場における基本的な事項、どのような場合に外国為替市場を利用するのか、円高と円安、為替相場の決定は購買力平価と金利平価で決定されることなどを取り上げる。
  経常収支の決定理論で有名な3つのアプローチを紹介する。
特に、三面等価の原則を用いて、「アブソープション・アプローチ」、「ISバランスアプローチ」における関係式を導出し、この関係式を用い、経常収支がどのような時に、赤字となるのかをそれぞれの例において、確認する。
  また、為替市場においては、自律調整メカニズムが備わっていることを確認する。
  まず、為替レートの決定理論の1つである購買力平価説を説明し、購買力平価説の代表例であるビックマック指数を取り上げ、この物価水準が為替の水準に影響があることを確認する。
  次に、アセット・アプローチの1つである金利平価説を取り上げる。
このアプローチは、1970年代以降、金融市場の統合や資本移動の自由を背景として、このアプローチが定説となっている確かに、最近FOMCでの為替の動きを見ても、金利が為替水準を動かす要因であることが分かる。数値例を用いて、金利裁定に関する関係式、金利平価条件を導出し、円金利、ドル金利の上昇、また円高予想となった場合のそれぞれの曲線の動きを確認する。
また、先物市場があり、これを用いてリスクを回避するケースの場合も考察する。
  開放経済におけるマクロ政策における政策の効果について考察する。まず、45度線分析を用いて、貿易がある場合の均衡国民所得の導出と各変数における乗数効果を求める。また、先ほどのモデルの応用である固定相場制、変動相場制の場合についても同様に、均衡国民所得と関係式を導出する。
  次に、開放経済におけるマクロ経済政策(財政・金融政策)が、為替相場制度(固定相場制、変動相場制)、国際資本移動(資本移動が完全な場合、資本移動がない場合)の程度などの違いによって、その有効性が異なることがあることを考察する(マンデル・フレミングモデル)。特にそれぞれの場合について、IS-LM分析における経済政策の効果とBP曲線との関係において、それぞれの場合について図解し、経済政策の効果について考察する。
 
REF.
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阿部顕三,遠藤正寛「国際経済学」有斐閣アルマ
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浦田秀次郎「国際経済学入門」日経文庫
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P.R.Krugman, M.Obstfeld, M.J.Melitz「クルーグマン国際経済学 理論と政策 〔原書第10版〕上:貿易編」丸善出版
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P.R.Krugman, M.Obstfeld, M.J.Melitz「クルーグマン国際経済学 理論と政策 〔原書第10版〕下:金融編」丸善出版
Finance (ファイナンス)
 
Application.
Realtime Spread Sheet (楽天証券)
MetaTrader
 
REF.
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木島正明「金融工学―経済学入門シリーズ」日経文庫
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ジョン ハル「フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系」金融財政事情研究会;
Mathematics for Economics (経済数学)
 
REF.
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丸山徹「経済数学」知泉書館
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丸山徹「数理経済学の方法」創文社
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小山昭雄「線型代数の基礎(上, 経済数学教室 1)」,
「線型代数の基礎(下, 経済数学教室 2)」,
「線型代数と位相 (上, 経済数学教室 3)」,
「線型代数と位相 (下, 経済数学教室 4)」,
「微分積分の基礎(上, 経済数学教室 5)」,
「微分積分の基礎(下, 経済数学教室 6)」,
「ダイナミック・システム(上, 経済数学教室 7)」,
「ダイナミック・システム(下, 経済数学教室 8)」,
「確率論 (経済数学教室 9)」 岩波書店
Economic Statistics (経済統計学) (大学2, 3年)
授業の到達目標
定期的に公表される各種経済統計を用いて,統計分析を実践し,自分なりに経済の現状等について判断できるようになる。
授業の概要
統計学の基礎理論や定期的に公表されている経済統計についての基礎知識を習得する。また表計算ソフト等を用いて,統計分析の手法や分析の結果の正しい読み方を習得する。さらには統計分析が経済学においてどのように利活用されているかを学ぶ。特に講義では,数多くの演習を交えながら実践力を養っていく。
  第1回 日本における統計制度
  第2回 全数調査と標本調査
  第3回 人口に関する統計
  第4回 労働に関する統計
  第5回 家計に関する統計
  第6回 物価指数
  第7回 経済・企業に関する統計
  第8回 商業・サービス業に関する統計
  第9回 住宅・土地・建設に関する統計
  第10回 教育・文化・スポーツ・生活に関する統計
  第11回 財政・貿易に関する統計
  第12回 加工統計(国民経済計算・景気動向指数)
  第13回 産業連関表と産業連関分析
  第14回 各統計調査における個票・アンケート
  第15回 統計GIS(地図で見る統計)
 
REF.
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谷沢 弘毅「コア・テキスト 経済統計」新世社
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中村 隆英, 美添 泰人, 新家 健精, 豊田 敬「経済統計入門」東京大学出版会
Econometrics (計量経済学)
 
REF.
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浅野皙, 中村二朗「計量経済学」有斐閣
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山本拓「計量経済学」新世社
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岩田暁一「経済分析のための統計的方法 第2版」東洋経済新報社
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G.S. マダラ「計量経済分析の方法」CAP
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William H. Greene, Econometric Analysis, Pearson Prentice Hall
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Fumio Hayashi, Econometrics, Princeton Univ Press
Social Survey (社会調査論)
授業の到達目標
社会調査は、社会が今どのような状況にあるのかを把握するための有力なツールの一つである。社会調査を企画、実施、分析し、報告書としてまとめるための一連の知識を身につけることを目指す。
授業の概要
この講義では、社会科学を研究するうえで必要な方法の知識と技術の基本を概説するとともに、事実の検証方法である社会調査の方法を中心に講義する。社会調査の種類とそれぞれの調査法の具体的手続きおよび問題点を述べる。そして調査データの解釈の仕方とその注意点について解説する。さらに調査データの公表の仕方に関連して、論文の構成、論文や資料の読み方、要旨の取り方、レジュメのまとめ方、発表の仕方などについても概説する。
  第1回 社会調査とは何か
  第2回 社会調査の対象と方法
  第3回 既存の資料・データの収集と活用(さまざまな社会調査)
  第4回 量的調査(1)調査の手順
  第5回 量的調査(2)母集団と標本
  第6回 量的調査(3)調査票の作成
  第7回 量的調査(4)調査票の点検とデータ作成
  第8回 量的調査(5)変数間の関係を把握する
  第9回 量的調査(6)母集団を推測する
  第10回 質的調査(1)質的調査の種類と考え方
  第11回 質的調査(2)インタビュー調査,フィールドワークの方法
  第12回 統計的調査
  第13回 事例研究法
  第14回 調査結果の見方(評価基準)
  第15回 社会調査と現代社会
 
REF.
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大谷信介,木下栄二,後藤範章,小松洋「新・社会調査へのアプローチ」ミネルヴァ書房
Information Processing II (情報処理II) (Word, Excel, PowerPoint等)
授業の到達目標
1. Wordを使った様々な文書を作成できる。
2. Excelを使ったグラフ作成、ならびに統計処理ができる。
3. PowerPointを使って様々な場面でのプレゼンテーションができる。
  第1回 ガイダンス(メール・ソーシャルメディアの利用、Google Driveの利用等について)
  第2回 Word(1): Wordの基本的な操作方法(見積書の作成)
  第3回 Word(2): Wordを活用した年賀状の作成方法
  第4回 Excelによるデータのまとめ方(1): Excelの基本的な利用法(VLOOKUP等)
  第5回 Excelによるデータのまとめ方(2): Excelによるデータの並び替え
(フィルター機能を用いたデータ抽出、ピボットテーブル機能を用いたクロス集計)
  第6回 Excelによるグラフの作成 (1) : 円グラフ、棒グラフ等
  第7回 Excelによるグラフの作成(2): より高度なグラフの作成と乱数の活用
  第8回 Excelによるグラフの作成 (3) : RESASを活用した地域経済分析
  第9回 Excelによる統計分析(1): 統計学の基礎、度数分布表の作成と正規分布
  第10回 Excelによる統計分析(2): Excelによる相関分析、単回帰分析、重回帰分析
  第11回 Excelによる統計分析(3): Excelによるテクニカル分析と時系列分析
  第12回 Excelのソルバーを活用した最適化
(最小化、2次方程式の解法、制限付き最適化、輸送問題(線形計画法)、ナップザック問題)
  第13回 Excelによる行列の取り扱い(基本的な計算、連立方程式の解法、産業連関表)
  第14回 PowerPointの取り扱い(スライドマスター、アニメーション、図の編集等)
  第15回 簡単なホームページとhtmlメールの作成
プログラミング (C言語, R, Python,Latex, Java, JavaScript)
C言語
経済学のための統計ソフト R 入門
Latex
JavaScript
オープンデータ関連